二の腕に螺旋状に入った刺青・切除 2

刺青が腕や脚などを一周して入っている場合には、それがどんなに細くて、幅的には一回で切除できるほどだとしても、切除手術は2回以上に分けて行う必要があります。
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腕や脚など、一週にわたって入っている刺青は、一度で切除する場合には、当然、その腕や脚を一周する形になります。その場合、手術の刺激による腫れが、その腕や脚を一周する形になります。腫れは、皮下組織や筋肉の増量ですので、通常は皮膚が盛り上がるという形で認識されます。しかし、その盛り上がりの中では、皮下組織や筋肉の内圧が高い状態になり、締め付けるように圧迫している状況です。皮膚の伸びには限界がありますので、その腫れが大きくなると、皮下の内圧が高くなり、神経や血管の圧迫も、高い圧力によるものとなっていきます。この際、その圧力が、動脈を流れている血圧を超えると、動脈が閉塞したのと同じ状況になり、そこから先の酸素や栄養の供給が断たれてしまいます。そうすると、最悪の状況では、腕や脚が壊死に陥り、切断しなければならない事態になります。また、傷が治ってくる過程では、傷はその長さを縮めるという現象が発生します。つまり、傷が縮むということです。これは、切り傷を負った時に、傷が突っ張るという現象で、日常生活上でも感じることがあると思います。この、傷が縮むという現象もまた、血管や神経を圧迫し、術後の手足のしびれなどの原因となります。
最悪の状況と言うのは、術後初期の、動脈の閉塞が発生した時です。その際には、酸素や栄養が腕や脚に極端に不足するため、傷だけではなく、腕や脚全体に強い痛みを感じます。これを阻血痛(そけつつう)と言うのですが、この阻血痛を感じているうちはまだ、腕や脚の組織は、壊死には陥っていません。本当に壊死に陥りはじめると、神経組織も壊死に陥っているため、この阻血痛さえも感じなくなり痛みが消えてしまいます。もし、腕や脚を一周する刺青を、一回の手術で切除して、特に何もなかったという方がいれば、「それは幸運でしたね」という言葉しか見つかりません。