顎を小さく短く+左右差の修正 症例写真 5

そこで、どこまで顎を小さく短くできるかということになります。これは、他の手術同様、合併症を考えなければ、どこまでも小さくできます。
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しかし当然ですが、合併症を考慮すれば、自ずとその限界というものがあります。その合併症とは、歯根の損傷と神経麻痺です。
歯は、顎の骨から生えてきます。つまり、顎の骨に支えられているのが歯であって、その顎の骨に支えられている部分を、歯根と言います。顎の骨には、その中に歯根が存在し、歯根を損傷すれば、歯を支えることができなくなり、最終的には歯が失活し、抜けてしまうことになります。この歯根は、下顎骨の場合、その途中まで存在していて、顎の骨をたくさん切除しすぎると、その時に損傷してしまいます。
神経麻痺は、オトガイ神経の麻痺です。このオトガイ神経と言うのは、前から数えて4番目か5番目の歯の下にある、オトガイ神経口という、骨に開いた穴から唇の方向に出てきます。このオトガイ神経は感覚神経で、下唇の感覚を司っています。この神経を損傷すると、下唇の感覚がなくなります。顔面神経のような運動神経ではありませんので、唇や顔が歪んでしまうということはないのですが、やはり多少の不自由を感じるものです。そしてこのオトガイ神経が骨から出てくるところであるオトガイ神経口は、手術の時に、大切な目安としても、利用されます。それは、このオトガイ神経口よりも下には、歯根が存在しないということです。正確に言うと、オトガイ神経口に連なる下顎神経が顎の骨の中を通って行く通路である下顎神経管よりも下には、歯根が存在しないということになります。つまり、オトガイ神経口よりも下の部分であれば、切除しても歯根を損傷することはないのです。したがって、手術の際には、このオトガイ神経口と、そこから出ているオトガイ神経を、直接目で見ながら手術を進めることになります。
このようにオトガイ神経口は、顎の骨を切除する時の骨切り線を、最終的に決定する時の目安となるものなのですが、そこよりも奥の部分である下顎神経管の走行が、それよりもやや下のほうに曲がっていることがあります。そこで、下顎神経の切断を防止するために、通常、骨切り線は、オトガイ神経から約5㎜、下のほうに設定するようにと、欧米の教科書には記載があります。
このように、歯根の損傷やオトガイ神経の損傷に注意して行われる顎の手術なのですが、神経線維の性質上、目で見えた時には常に障害を考えなくてはならないという現実があります。これは、オトガイ神経口を確認するためにそれを露出させた時点で、麻痺のことを考慮する必要があるということです。したがって、この、オトガイ神経麻痺は、100%防止することは不可能なものであるということです。では、どの程度なのかというと、このような手術の場合、約2から3%の人に、ほんの一部分ではあるのですが、オトガイ神経麻痺を残してしまうことがあります。勿論、下唇全体の感覚麻痺ではなく、ほんの一部の麻痺も入れた確率です。これを、重大な合併症で高い確率と見るか、軽度で低い確率と見るかは、患者さん本人の判断であることは、いうまでもありません。