連続切除・縫合法における、各回の手術の間隔は、皮膚の性質と、刺青周辺の皮膚の量によっておよその決まってくるものですが、もうひとつ、それを決める要素があります。
それは、日常生活上、どれだけ動かすところなのかということです。つまり、腕や足の関節の付近は、どうしても手術と手術の間隔を長く取らざるを得ません。それは、たとえば、手術台の上で横になっているときには縮んでいた部分も、立ち上がったり座ったりすれば、その部分が引き伸ばされることになり、傷を開く方向に力が加わってしまうことが多いためです。これを、刺青の全てを早く切り取ってしまいたいがために、無理に手術間隔を短くすると、関節の運動が制限されてしまいます。そうすると、長期間にわたって日常生活に支障が出るばかりか、関節の運動を行わないことによって、関節拘縮という現象が発現し、関節の可動域が狭くなってしまいます。つまり、その関節が曲がりにくくなり、そこだけ、いわゆる「体が硬い」という状態になってしまうのです。一度拘縮を起こした関節は、若い人でも数ヶ月間のリハビリテーションで、じっくりと回復させる必要があり、これをまた急いでしまうと、関節の靱帯を伸ばしてしまったり、肉離れを起こしてしまったりし、回復にさらに時間を要することになってしまいます。