F to M 乳房切除症例写真 4

乳腺周囲の脂肪吸引が終了したら、いよいよ、乳腺の摘出になります。
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乳腺の摘出に際しては、出血のコントロールが最も重要なことになります。元々が発生学的には、皮膚の付属器である汗腺と同根の乳腺には、太い血管はありません。しかし、その位置が心臓に近い分、細い血管であっても中を流れている血液の圧力が高く、体の他の部分よりも、止血を慎重に行わなくてはならない箇所です。そこで、肉眼で見える血管や出血箇所は、電気メスで焼灼して止血するのではなく、必ず、糸で結紮(結ぶこと)によって、止血を行うことが大切です。したがって、最初に乳腺の周囲の脂肪吸引を行っておくことには、それらの血管を見えやすくするという観点から、大きな意味があると言えます。実際の乳腺の摘出は、これらの血管を結紮して切断するのと、クーパー靭帯を切断するのとを、ほぼ交互に何度も繰り返しつつ、乳腺を少しづつ引っ張りだしながら、行われていきます。
この、F to M性転換乳房切除術における、最も重大で頻度が多いとされている合併症が、術後の血腫です。F to M性転換乳房切除術は、このように、小さな切開創から、比較的大きなボリュームの乳腺を取り出す手術です。術後には、それまで乳腺の入っていた箇所には、その体積分の空洞ができます。空洞は圧力が加わっていないため、出血した血液が溜りやすいということができます。そして血液の溜まりである血腫が発生すると、空洞を押し広げるように作用し、そのことでさらに血液が溜るという悪循環が発生して、血腫はどんどん大きくなっていきます。さらに前述のように、胸部は心臓に近い分、細い血管であっても中の血圧が高く、血腫が発生しやすい解剖学的素地があります。そこでF to M性転換乳房切除術では、このような慎重かつ確実な止血操作が大切なプロセスの一つとなっています。内部の止血が完了したら、止血剤を浸透させたガーゼを、乳腺のあったところに詰め込み、圧迫を行います。内部にガーゼを詰めて圧迫するのは、ガーゼに付着した血液を基に、直視下で確認できなかった出血巣の存在を、もう一度チェックするためです。ガーゼを詰め込んでの圧迫が終了し、ドレーンを挿入します。このドレーンは、小さな血腫ができることを防止するために挿入します。中に血腫が形成されて、組織同士がくっつこうとするのを妨害しないようにするためです。このようにして、当院では、術後の血腫形成を、2重3重に防止する手術手技を採用しています。