鼻尖縮小術において、他院で、鼻翼軟骨を切除せずに、それらを中央で縫い合わせるだけの手術を行っている場合が散見されます。
そしてそのような手術を受けた患者さんが、異口同音に言うのは、「術前と変わりがない」、または、「鼻の先は確かに細くなったが、その少し上の部分はむしろ太くなった」、といったものです。これは、鼻翼軟骨の鼻先に当たる部分の前方が縫合されたため、その少し後ろの部分が、シーソーのような原理で外側に拡がってしまったためです。では、鼻翼軟骨の縫合を、前方ではなく後方もおこなえば、そのようなこともなく、軟骨の切除を行わなくてもいいのかという疑問が湧くと思います。その疑問についての答えは、理論的にはイエスです。しかし、実際的にはNOです。それは、その部分の軟骨と鼻粘膜の解剖学的な位置関係によるものです。鼻先においては、鼻翼軟骨は、皮膚と鼻粘膜の移行部にその辺縁があるため、そこには皮下組織が比較的分厚く、鼻翼軟骨を単独で周辺から剥離してきて、両側の鼻翼軟骨を中央で結紮することが容易です。しかも、そこは手術の切開線からも近く、結紮操作が簡単に行える箇所なのです。しかし、それよりも奥になると、鼻翼軟骨の裏側には薄い粘膜が貼りついていて、この部分できちんとした形で軟骨を結紮し、しかもその部分が細くなるようにしようとすると、鼻腔内に糸が露出してしまうのです。鼻腔内にこのような糸が長期間露出すると、そこから細菌が侵入し、術後の化膿の原因になります。運よく化膿しなかったとしても、鼻先が手術直後のようにいつまでも赤くなったりします。これらの理由から、鼻翼軟骨の切除を伴わない鼻尖縮小術は、その効果や安全性の上から、当院ではほとんどの場合に、行うことがありません。鼻先を細くするための鼻尖縮小術は、鼻翼軟骨の切除を行うことが、安全かつ確実に効果を出せる方法だからです。