このように、ウルトラV-リフトの効果については、術後ごく初期の効果は美容鍼(針)の原理と、糸による皮下組織の硬度の増加によるものです。また、術後後期の効果(術後数週間から半年ないしは一年)については、糸とその周辺へのコラーゲンを主体とした成分の増成によるものです。
では、ウルトラV-リフトの糸は、できるだけ硬くて溶けにくいものがいいということでしょうか?それはある意味ではYesですが、全体的な意義としてはNoということになります。ウルトラV-リフトで使用する、硬さがあるポリディクサノン(Polydioxanone、ポリジオキサノン、PDS、PDO)の単一繊維(モノ・フィラメント)の糸は、できるだけ硬く長期間にわたって溶けにくくするためには、その太さを太くしなくてはなりません。糸が太くなると、理論上は硬さが増して、皮下組織の硬度を増加させるのにも有利です。また、皮下組織内で溶けてなくなってしまう速度も遅くなり、効果も長持ちします。しかし、臨床的には太い糸は実用的ではありません。まず、挿入するための針が太くなります。そのことで痛みも強くなりますので、表面塗布麻酔だけでは施術不可能になります。すると腫れが大きくなり、せっかくの即効性が台無しになります。さらに、太い針を使用することで、皮下の内出血が、その頻度と重症度を増すことになるでしょう。そして、皮下の違和感の増大です。実際には、表情を変えるたびにチクチクした感覚に襲われることになるでしょう。これまでのウルトラV-リフトでは、皮下の違和感を訴える患者さんは、本当にごく少数だったのですが、糸が太くなればこの訴えはもっともっと増えることでしょう。したがって、ウルトラV-リフトで使用する糸は、現在の非常に細い糸であることが、いろんなメリットを享受するためには大切なことであるということができます。